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守備範囲広めのオタク

『あげくの果てのカノン』から考える"好き"

※ネタバレあり

 

 

 

あげくの果てのカノン」(全5巻)を購入し、一気に読み終えてしまい、気付けば深夜3時。

なんとも言えない微妙な気持ちにさせられ、困り果ててしまった…。

 

商業BLじゃないけど、レビューします!

 

 

 

まず、最初に思ったのはこれオタクは胸にくるヤツ〜!」でした。

かのんの好きって、どちらかと言うと恋というより境先輩オタク。収集して、崇拝して、中毒者のようにメロメロになってしまう。例えクズだったとしても。

境先輩が有名人だったのもあって、その印象が強かったです。

 

 

では、いくつかに分けて感想を壁打ちしたいと思います。

 

 

 

1. 人を好きになるということ

 

境先輩は修繕の度に身も心も変化していきます。そんな境先輩に、いつか自分が捨てられる日が来ることを恐れながらも、かのんは恋し続けます。

 

これって、SF要素のお陰でわかりやすくなっているだけで、普通の人間でも有り得ることで。

初穂さんが垢抜けたように、普通に人間は変わっていくものです。

 

たまーに「我々は一体何に恋をしているんだろう」って考える時があります。

 

例えばソシャゲかなにかの「ドSな俺様キャラ」のことが好きな人がいるとして。

そのキャラが、新エピソードで「本当は虚勢を張っているだけの気弱キャラ」だったということが判明したとします。

ここで「え?私の好きだった〇〇君じゃないじゃん」となり冷めてしまう人もいると思いますが、絶対に「え?!そんな〇〇君も最高!」となる人もいます。

 

この場合、後者は一体誰を好きだったんでしょうか。

「ドSな俺様キャラ」が「気弱キャラ」という全く違う人間になってしまったのです。

これは、境先輩と同じ状況ではないでしょうか。「優しい眩しい神様」だった初恋の人は「人を見下し浮気をするようなクズ」だった訳ですから。全く違う人間ですよね。

 

じゃあ何を好きになった時、「人を好きになった」と言えるのでしょうか。

見た目だけでいいなら、松木平くんでいいわけです。

 

かのんは、境先輩が修繕によって松木平くんのような性格になってしまった場合も、境先輩を追い続けるのでしょうか。

もしもそうなってしまった場合、境先輩と松木平くんの違いはなんでしょう。

それは、「積み重ねた過去」ですよね。

思い出たちが、境先輩の中には見えるわけです。

 

ここが、冒頭で言った「これオタクは胸にくるヤツ〜!」なんです。

我々は誰かを推す時、絶対に過去を積み重ねていきます。例え顔から入ろうと、声から入ろうと、推していく過程で思い出が生まれます。

それは推しが成長していく姿を見届けられたことの感動だったり、キラキラの笑顔でファンサしてくれた喜びだったり、金を必死に注ぎ込んだ苦しみだったり。

これらがオタクを苦しめるのは、推しが炎上したり、もしくは自分が推し変しようか悩んでいる時だったりじゃないでしょうか。

 

オタクは皆かのんの一面を持っています。

オタクじゃなくても、持っているかもしれない。

あんなに時間をかけて、あんなに迷惑をかけたのに、最後の最後結局、かのんは境先輩にメロメロになってしまいます。まるで中毒者です。

散々「2度と現場行くか!」「もう降りる」と言っていたのに、推しの姿を見た途端メロメロになってしまうのが、オタクのサガではないでしょうか。ええ、こっちもまるで中毒者です。

 

「人を好きになること」は、ある種中毒者になるという事なのでしょうか。

恋は盲目、怖い話です。

 

 

2. 夫婦と恋人

 

未婚の私が語れたもんじゃないんですけど、ヒロくんと一緒にモニター越しに「夫婦」を見せつけられるシーン。強烈でした。

"結婚"って不思議ですよね。他人なのに、契約一つで夫婦になっちゃうなんて。支え合い、添い遂げることを求められる。犯罪じゃないのに、不倫で大バッシングを受ける。それくらい重たいものなんですよね、結婚って。

 

あの瞬間、初穂さんと境先輩は夫婦だった。

不倫を認め、協力し、大いなる目的のために進む。きっと、夫婦に求められるのってこういうことで。

皆人間ですから、間違いは犯します。それは浮気かもしれないし、もしかしたら法に触れてしまうかもしれない。

パートナーがそうなった時に「良い旦那!」「良い妻!」と言われポジティブな報道をされるのは決まって、「パートナーの非を認め、叱り、謝罪をし、傷付いたパートナーを献身的に支え続けること」じゃないですか?

夫婦ですから、家族ですから、という優しさが求められます。

あの瞬間、初穂は"そう"なれたんだと思います。かのんはそれを、まざまざと見せつけられたんだなあ。

 

一方恋人は、そんな責任負わなくていい。「そんなヤツ別れちゃいなよ!サイテー!」って簡単に言えるんですね。結婚と違って、約束事が無いから。

様々なしがらみに縛られている夫婦よりよっぽど、楽で楽しくて魅力的!っていう考え方もありますよね。

境先輩も、会う機会が減るであろう初穂と一緒にいたいからプロポーズした訳ですし。

色んな意味で相手を"縛れる"のが、結婚なんでしょうね。

 

でも、境先輩にとってかのんは、"縛る"必要が無いなあって、思うんです。

きっとかのんは先輩との"希望"があるなら、地の果てまでついて行くでしょう。何よりも先輩を優先するでしょう。

そんなかのんを縛る必要があるんでしょうか?

果たして二人は、幸せになれるんでしょうか?

 

 

3. 高月ヒロくんに恋をした

 

これは、どーでもいい個人的な話なんですけど

高月ヒロくん最高すぎません!?

ヒロくんが好きすぎて、しんどいです。

いや、高月ヒロくん、何年かのんのこと想ってるんですか?

ダウナー無気力系に見えて、かのんに関する時は凄くイキイキとした表情をしますよね。告白する時とかね。

小さいコマでもかのんを見てて、ホントに健気すぎて、泣けてきます。

学校サボりがちだった彼が、高学歴で良い職について、また告白するあのシーン。

境先輩のカリスマ性とか、有名度とか、そういうのに対抗したのかなって思うとホントに……。最後の最後までかのんのことが好きなヒロくんが大好きです。

 

先輩を想うかのんを想うヒロを想う私なのですが、初穂に呼ばれた時は「2人がそういう関係になったらどうしよう…!」、「かのんのこと途中で好きじゃなくなったら…」と凄くハラハラしました。

これって私は、「ヒロくんに変わって欲しくなかった」ってことですよね。

かのんを想い続ける健気なヒロくんが大好きだから。

そう考えると、本当にかのんってすごいなあ。

変わり続ける先輩を愛せるんですから。

 

 

 

長くなってしまいましたが以上です。

結末は賛否両論ありそうですが、オススメなのでぜひ読んでみてくださいね!